不幸に甘んじる

私は忘れられないことの方が多い。

掛けられた嬉しい言葉も優しい視線もその手の暖かさも、何もかもが忘れられない。

諦めなくてはならないのに諦められない。

幸せになれないのは幸せになろうとしていないから。

自分は幸せになってはいけない人間だと思い込んでそこに落ち着いている。

不幸な方が安心できるから。

幸せは毒や薬、はたまたウイルスのようなものだ。

私の身体では、私の心では何もかも耐えられない。

耐えられなくなって、逃げ出してしまう。

それが分かっているから私は不幸に甘んじている。

不幸だ不幸だと嘆く方が幸せになるよりよっぽど私らしいから。

それでもやはり幸せを諦めきれないのは、私が人間たり得る証拠だろう。

あの人が好きだ。

満たされたい。

認められたい。

望んではいけないことだと分かっていても望んでしまう。

何度冷静になって考え直してみても、熱が上がる度に思い返してしまう。

幸せになりたい。

なってどうするのだ。

幸せになったところで何も出来ない癖に。

それを維持するだけの気概を持ち合わせていない癖に。

気持ちが悪い。

気持ちが悪い。

生きていることが全て良くない。

生存本能に支配される自分が嫌いだ。

食欲も、睡眠欲も、性欲も、それを持ち合わせている自分が嫌いだ。

全て無くなってしまえばいい。